人類の生活を豊かにする発酵食品

微生物は、空気中、水中、土中、植物や動物の身体の中など、地球上のあらゆるところに存在し、その数は、天文学的でちょっと想像しにくい「1の後ろに0が28個付く」数字にまでにのぼると言われます。
微生物のとても多い環境のひとつがよく耕された畑で、わずか1gの土の中にさえ、細菌が数億、酵母が数千万、カビは数万生息するともいわれます。

極限の環境を好む微生物

細菌やカビというと、湿度や気温が高い環境で繁殖しやすいイメージですが、中には、極限の環境を好む微生物もいます。

北極や南極などの寒冷地には、氷点下で育成する微生物が何種類も見つかっています。反対に、砂漠や温泉など超高温を好むものもいます。
大西洋の海底火山からは100℃以上でも育成する微生物が見つかりました。また、海水でも死滅する微生物がいる中で、その数倍以上の濃度の塩湖「死海」にも適応する微生物がいます。さらに、地上から10㎞ほどの、ほとんど生物のいない成層圏近くでも微生物が発見されています。

これからは、特異な性質の微生物を人間の暮らしに役立てるための研究が、盛んに進められそうです。例えば、例えば寒冷地でも活動的な微生物を利用して、洗う際の水が冷たくても充分に汚れが落ちる洗剤などが、誕生するといいですね。

人の体内にもいる微生物

人間の身体は数十兆個の細胞で構成されています。そして人間の体内にも、細胞数と同じかそれ以上の微生物が生存するといわれ、口、鼻、胃、小腸、大腸、皮膚などほぼ全身に分布しています。
これらは、免疫反応を調整して感染症にかかりにくくする、皮膚を弱酸性に保って炎症を起こしにくくするなど、心身の働きと密接に関わっています。私たちの身体は微生物と共にその生命を維持している、と言っても過言ではないのです。

まだまだ未知の微生物

人間は遠い昔から、発酵という現象を通じて微生物に親しんで来ました。
顕微鏡によりその存在が発見され、徐々に生態が知られることで、関係はより親密さを増しています。そして分かったのは、人間と地球、そして微生物は、知らず知らずのうちに互いに助け合い、「生かされている」という事実です。

けれど私たちが把握している微生物はまだごく一部で、全体の1%とも5%とも言われます。
この世界にはきっとまだ、驚くような生態を持つカビや細菌が、思わぬ場所にひっそりと存在していることでしょう。

微生物はまだまだ可能性の宝庫。発酵技術を用いた研究による全貌の解明に期待が寄せられます。
勇心酒造も、未知の微生物に出会い新たな発酵を開発すべく、日々研究を重ねています。
ミクロの世界の謎に迫ることは、宇宙に飛び出すのと同様に、有意義でワクワクする探究の旅なのです。